日本に住んでいて、自分の財産を銀行預金に預けておく行為は極めて安全な資産形成です。万が一、銀行が破綻してもペイオフという制度で元本1,000万円までとその利息については保護されます。
しかし、投資の世界では、銀行預金やゆうちょ銀行の貯金のように投資額が保証されることはありません。それなのに預貯金のリスクを大げさに言う人が後を絶ちません。
低金利をリスクと訴える
預貯金がリスクがあると訴える人たちが、よく口にするのが、預貯金の低金利です。
彼らは、金利が低いので長期間預けていてもお金が増えないから、もっと利回りの良い投資先を探すべきだと主張します。確かにその通りです。預貯金は、株式や社債よりも利回りが悪いので、長期運用しても、大して利息を受け取れません。
しかし、低金利をリスクと訴えるのはまちがっています。
リスクとは将来の不確実性のことであり、不確実な要素が多い投資ほど投資家が要求する利回りは高くなります。簡単に言うと、高い利回りを期待できる投資ほどリスクが高いのです。反対に預貯金は、将来の不確実性の要素が少ないので低金利なのです。
このことを理解していれば、預貯金が低金利だからリスクがあるという主張がまちがいだとわかります。
インフレになると資産価値が目減りすると訴える
また、預貯金がリスクがあると主張する人は将来のインフレの可能性を持ち出します。
株式の場合は、インフレになるとその分だけ株価が上がるので、物価上昇局面で有利な投資先だが、預貯金はインフレになると資産価値が目減りするので物価上昇局面では不利だと言います。
確かに定期預金は、預け入れた時の利率が適用されるので、インフレになると資産価値が目減りする危険があります。しかし、普通預金の場合はインフレで資産価値が目減りする危険性は極めて低いです。なぜなら、普通預金に適用される利率は、名目金利に物価上昇率(インフレ率)を加味したものだからです。
将来のインフレ率が1%であれば名目金利に1%が加味されますし、インフレ率が2%であれば名目金利に2%が加味されます。
預金は国債に依存していると訴える
預貯金にリスクがあると主張する人は、預金が国債で運用されている割合が高いことを危険だと訴えます。
日本の財政が破綻した時に預金を国債で運用している国内の銀行も連鎖的に破綻してしまうと言うのです。実際に国家の財政が破綻すれば、銀行も破綻し、預金が戻ってこないかもしれません。
しかし、国家の財政が破綻して影響を受けるのは銀行だけではありません。他の企業だって同じように倒産するかもしれないのです。また、倒産しなかったとしても、日本経済の先行きに不安を感じた機関投資家が日本株を売り始めますから、日本企業の株価は軒並み下落します。
したがって、国家の財政は預貯金だけでなく、株価にも影響を与えているので、財政破綻が預貯金だけに悪影響を及ぼすのではないのです。
預貯金のリスクをことさら訴える人は、単に不安を煽っているだけです。もちろん、預貯金以外にも分散投資をしておいた方が安全ですが、他の投資先が預貯金よりも安全だと言えないことは理解しておきましょう。