ポートフォリオ内の銘柄が値下がりすると大損しているように感じる

安全な資産運用の基本は分散投資です。

例えば、株式投資の場合だと、1銘柄だけに大きく投資するのではなく、複数の銘柄に投資した方が、大きく損する可能性が軽減します。資産運用はギャンブルではないので、大きく儲けることよりも、大きな損失を出さないようにしなければなりません。

しかし、損してはいけないという気持ちが強すぎるのも考えものです。

損失を意識しすぎる

安全に資産運用をするため、A株式とB株式に投資していたとします。

両株式は、一方が値下がりしても、もう一方が値上がりすると期待できるため、両方が同時に値下がりしにくい関係にあります。

ある時、A株式は1,000円の値上がり、B株式は1,000円の値下がりとなっていました。この場合、損益を打ち消し合っているので、分散投資の効果が出ていると言えます。

だから、特に問題とすることはないのですが、値下がりしているB株式がどうしても気になってしまいます。そして、株式投資そのものがうまくいっていないと感じ始め、損をしていると思い始めます。

実際には、両株式を合わせれば損をしていませんが、B株式の1,000円の値下がりが、それ以上の値下がり、例えば1,500円値下がりしたかのように感じてしまいます。

2銘柄の場合

人には、このように損を得よりも大きく感じてしまう損失回避性という特徴があります。この傾向は、効用関数で表されています。

銘柄単位で損益を把握しない

資産運用は、安全性を考えて分散投資するのですから、資産運用がうまくっているかどうかを判断する指標となるのは、ポートフォリオ全体の損益です。

上の例だとA株式とB株式の2銘柄だけなので、簡単にポートフォリオ全体の損益を確認できます。しかし、複数の銘柄に投資している場合は、株価をちょっと見ただけではすぐに損益を確認できません。

例えば、A株式、B株式、C株式、D株式の4銘柄に投資しており、A株式以外の3銘柄が値下がりしていたとします。この場合、ぱっと見た感じだとポートフォリオ全体の損益はマイナスになっているように思えます。

しかし、よく計算してみると、以下のようにポートフォリオ全体では、1,000円のプラスになっていました。

4銘柄の場合

しかし、損失回避性の特性から、A株式以外の3銘柄については、実際の値下がりよりも、心の中の値下がりの方が大きく感じるため、ポートフォリオ全体で損をしているように思えてしまいます。特にぱっと見ただけで、損益を計算しなかった場合には、より大きな値下がりに感じることでしょう。

分散投資では、銘柄単位で損益を把握して、得している、損していると判断するものではありません。しかし、分散投資の目的を理解していない人は損切りが大切だと思って、値下がりの大きな銘柄だけを売却し損を確定しようとします。

値下がりしている銘柄は、値上がりしている銘柄と対になっていることを忘れてはいけません。売却するのであれば、まとめて複数の銘柄を売却し、損益を打ち消し合うべきです。

ポートフォリオ内の特定の銘柄が値下がりしていると、大損しているように感じます。

でも、ポートフォリオ全体の損益を合計し、損益を打ち消し合っていることが確認できれば、気にすることはありません。過度に損失を意識しすぎて、損切りばかりしていると、結局、全ての株式を取得原価以下で売却することになります。

資産運用がうまくいっていないと思ったときは、人には損失回避性という特徴があることを思い出してください。そして、もう一度、ポートフォリオ全体の損益を計算してください。