預貯金、株式、不動産、債券。資産の運用先は様々あります。そして、運用目的は人によって異なります。老後の蓄え、育児費用、子供の学費などに備えるのが、よくある資産形成ですね。
では、育児費用は預貯金で、老後の蓄えは株式で、子供の学費は国債などの債券で、そういった具合に使用目的と運用先を明確にすることは意味があるのでしょうか?
貸借対照表を見ればわかる
答えを先に述べると、使用目的と運用先を明確にすることに意味はありません。すなわち、使用目的と投資先を紐付て考える必要はないということです。
これは、企業が作成する貸借対照表を見ればわかります。
上記の貸借対照表の右側は、資金の調達源泉を表しています。負債は他人からの借金で調達した資金がいくらかを示し、純資産は基本的に株主からの出資を受けて調達した資金がいくらかを示しています。
これら借り入れた資金である負債と出資を受けた資金である純資産(資本)は、一度ごちゃ混ぜにされた後、商品、機械、土地、株式などの資産の取得に充てられます。A銀行から借りた100万円は商品100万円へ、B銀行から借りた200万円とC銀行から借りた300万円の合計500万円は機械400万円へといった割り振りが行われているのではありません。
企業の経営活動で合計いくらの資金が必要かを決定し、その後で銀行からの借入や株主からの出資を受けるのです。すべての資産の購入に1億円が必要なら、借金でも株式発行でも、どのような手段でも構わないから、とにかく1億円の資金調達を行わなければなりません。
この考え方は、個人の資産形成でも基本的に変わることはありません。将来のある時点でいくらの資金が必要かを見積もったら、それまでに資金を用意できるように資産形成すれば良いのです。
資金を融通し合う
仮に学費、老後の蓄えなどの使用目的別に資産運用をしたとしても問題はありません。
ただ予定していたよりも学費が多く必要となった場合には、老後の蓄えのために運用している資産を取り崩して学費に充てるという柔軟な対応は必要です。
また、それぞれのイベントは同じ時期に起こりませんから、各イベントが発生するまでにいくらの資金が必要かを見積り、その時までに資金を用意できる資産運用をすれば構いません。同時並行で、学費のための資産運用、老後の蓄えのための資産運用と切り分ける理由はないのです。
ただし、個人型確定拠出年金(iDeCo)のように掛金を引出せない資産運用もあるので、目的に合わせて資産が切り分けられる場合があることも知っておきましょう。