リスクプレミアムを考慮して資産運用しているか

景気が悪くなると預貯金の利率が低くなることから、株式や不動産で資産運用しないと損すると言われます。確かに0.001%の利率で定期預金や定額貯金にお金を預けても、大した利息を受け取れませんから、少しでも運用益が有利になりそうな投資対象で資産運用をしたいものです。

では、預貯金ではなく株式や不動産であれば、本当に有利な資産運用ができるのでしょうか?

リスクに見合ったリターン

投資の基本的な知識として、期待運用収益はその投資対象が有しているリスクに応じて決まることを抑えておかなければなりません。

国債から得られるリターンは他の投資対象よりも少なくても構わないと思う投資家がたくさんいます。これは国が破綻して損する危険性が、株式、社債、不動産などと比較して極めて低いから多くのリターンを求めなくても良いと判断しているからです。

一方、小さな会社の株式を取得しようとする場合、国はもちろんのこと大企業と比較しても倒産する危険性が高いため、投資家は国債や大企業の株式よりも多くのリターンを要求したくなります。

このように投資対象が有しているリスクに応じて上乗せされた期待運用収益をリスクプレミアムと言います。基本的に国債にはリスクがないのでリスクプレミアムは上乗せされません。一方、企業の株式は、国よりも破綻する危険性が高いので、その分だけ投資家は多くのリターンを要求します。この企業に求めるリターンから国債の利回りを差引いた部分がリスクプレミアムです。

不景気だと株価の値上がりも配当も少なくて良いのか

定期預金も定額貯金も、年利が0.001%しかないので、少しでも運用益が高くなりそうな株式に投資した方が良いだろうと考える人は多いと思います。

しかし、景気が悪いということは企業の売上や利益が不安定になりやすいですし、最悪の場合は倒産することもあります。つまり、景気が悪くなった時ほど上乗せされるリスクプレミアムは大きくなるはずです。

バブル期には、定額貯金の年利が5%以上ありました。郵便局が倒産する危険性は極めて低かったので定額貯金は無リスク資産と言えます。一方、企業も景気が良かったので、上乗せされるリスクプレミアムもそれほど多くなくても良かったはずです。仮にリスクプレミアムを3%としたら、当該株式を1年間運用した時に得られる収益率は8%となります。

現在のように景気が悪く、どの企業も減収や減益になる可能性が高く、最悪の場合は倒産するかもしれないという状況では、バブル期よりもリスクプレミアムが大きくなるはずです。バブル期に3%しかリスクプレミアムが上乗せされていなかった株式でも、不景気の時には4%や5%にリスクプレミアムが上がっているのが当たり前でしょう。そう考えると、同じ企業の株式でも、不景気の時には無リスク資産の利子率0.001%に4%や5%を上乗せした4.001%や5.001%のリターンを求めなければなりません。

ところが、不景気になると預貯金では大した運用益を期待できないから、少しでも有利な投資をしたいと考え、リスクプレミアムがバブル期よりも低い1%や2%でも構わないと思う個人投資家が多いように思います。これは、リスクに見合ったリターンを求めていない投資行動なので、やってはいけない資産運用です。

リスクプレミアムを正確に見積もるのは不可能です。だからと言って、リスクプレミアムを意識せずにリスクのある資産に投資すべきではありません。少なくとも、国債、定期預金、定額貯金の利率がどのように推移してきたかは抑えておくべきです。