普通預金残高に余裕がある場合、少しでも利率の良い定期預金に預け替えした方が資産形成には有利です。ただ、定期預金はインフレに弱いので長期の定期預金は組むべきではありません。
定期預金の契約をする場合、適用される利率には2種類あります。ひとつは単利型、もうひとつは複利型です。
単利型は、元本に対してしか利息が付きません。例えば年利1.0%の定期預金に10万円を預け入れた場合、毎年1,000円の利息が付きます。10年間預け入れた場合は1万円です。
これに対して複利型は利息にも利息が付きます。上と同じ例だと1年目の利息は1,000円で変わりませんが、2年目の利息は元本10万円と1年目の利息1,000円の合計額101,000円に対して利率が適用されるので、受取れる利息は1,010円となります。3年目には、さらに2年目の利息も上乗せされて利息計算が行われ、4年目以降も過去に受け取った利息に利率が適用されます。
したがって、定期預金は単利型よりも複利型の方が一般的には有利となります。
複利型には期間の縛りがある
普通に考えれば、誰でも複利型を選ぶでしょう。でも、なぜ銀行は、単利型と複利型の定期預金を用意しているのでしょうか?
それは、金利が有利な複利型には、期間の制約を設けているからです。
多くの銀行の場合、単利型は1ヶ月から10年までの期間を預金者が選ぶことができます。しかし、複利型の場合は、3年以上10年までといったように預入期間が長期になり、預金者にとっては資金を拘束される期間が単利型より長くなるといった短所を持っています。
仮に10万円を年利1.0%の複利型の定期預金に10年間預けた場合、元利合わせた10年後の払戻額は110,462円です。したがって、10年間で得られた利息は10,462円となります。なお、1年複利計算で利息計算を行い、税金は考慮していません。
単利型で10年預けた場合の利息が10,000円なので、複利型は462円だけ多く利息を得られることになります。
将来の物価上昇を考える
さて、上の例の場合、10年間でたった462円しか利息を多くもらえない複利型の定期預金が単利型の定期預金よりも有利と言えるでしょうか?
確かに最初から10年間、預金を絶対に引き出さないと決めている人にとっては462円とは言え、複利型を選んだ方が有利と言えます。
しかし、金利は常に変動します。
1年後は現在よりも金利が上がっているかもしれません。1年後の金利が1.1%に上がっていれば、新たに定期預金を組んだ方が得られる利息は多くなります。その後も金利が上昇していけば、複利型で長期間資金を拘束されるよりも、短期の単利型定期預金を満期になるごとに預け替えしていった方が、明らかに多くの利息を得られるでしょう。
複利型の定期預金は利子が利子を生むので非常に魅力的です。しかし、預入期間が長期になる定期預金は、将来の金利上昇の期待を捨てることになることを理解しましょう。そして、将来の金利上昇に備えて、余裕資金全額を長期の複利型定期預金に預けるべきではありません。