よく現金や普通預金は、物価上昇局面、すなわちインフレに弱いと言われています。
現在、1万円で買える腕時計がインフレによって1年後には1万500円になっていた場合、同じ1万円でも現在は腕時計が買えるのに1年後には腕時計を買えません。したがって、この場合、現在の1万円と1年後の1万500円は価値が同じということです。
このような例から現金や普通預金はインフレに弱いと言われるのです。現金1万円を財布の中に入れて1年間そのまま使わずにいたら、買えたはずの腕時計を買えなくなっているから、確かに現金はインフレに弱いです。しかし、同じことは普通預金には当てはまりません。
預金利率はインフレ率を加味して決まる
普通預金には、少ないながらも利息が付きます。
預金利率の決定には、将来のインフレ率も加味されます。例えば、1年後に現在よりも5%物価が上昇すると予想されれば、普通預金金利は、インフレ率5%にいくらかの利率が上乗せされて1年後に支払われます。
したがって、1万円を普通預金に預けておけば1年後には少なくとも500円の金利を受け取れるので、元本と合わせて1万500円となります。だから、普通預金に預けておけば、現在1万円の腕時計が1年後に1万500円になっていても、インフレ率相当の金利を受け取れるので、腕時計を購入可能です。
このことから、普通預金は将来のインフレに強いと言えます。
インフレ率の予想が外れると価値が目減りすることもある
しかし、普通預金がインフレに強いと言っても、必ずしもインフレによって価値が目減りしないとは言えません。
銀行が将来のインフレ率を的確に予想できている限りは、普通預金の価値は目減りしません。銀行がインフレ率を3%と予想し、1年後に物価が3%上がっていれば、預金者はインフレ率に見合った利息を受け取れます。
ところが、銀行が3%と予想したインフレ率が実際には5%だった場合には、普通預金の価値は2%目減りしてしまいます。そのため、絶対に普通預金の価値はインフレによって目減りしないとは言い切れません。
銀行のインフレ率の予想が外れたとしても、早い時期に実際のインフレ率に見合った利率に預金金利を修正すれば、普通預金の価値の減少は少なくて済みます。実際のインフレ率が普通預金金利に反映されるまでに3ヶ月かかる場合と1ヶ月かかる場合を比較すれば、1ヶ月で反映する場合の方が、より価値の目減りは少なくて済みます。
このように普通預金は、銀行のインフレ率の予想が正確であれば、物価上昇に強い資産と言えます。また、実際のインフレ率との間にズレが生じても、すぐにそのズレを修正できれば、普通預金の価値の目減りが少ないことから、安全性が高い資産と言えるのです。