普通預金の利率が低いことから、少しでも高い利率で余剰資金を運用するために定期預金に預けるという選択があります。当分の間、必要としないお金なら、普通預金で寝かせておくよりも定期預金にしておいた方が多くの金利がつくので、確かに良い運用方法だと言えます。
しかし、定期預金に預ける場合、中途解約ができない長期の定期預金に預けるべきではありません。
金利は常に変動している
基本的なことですが、金利は常に変動しています。でも、定期預金に預ける際は、預入日の利率が預入期間に渡って適用されます。例えば、期間1年で年利1.0%の定期預金であれば、預け入れ後に金利が上がろうが下がろうが、適用される金利は基本的に1.0%です。
定期預金の利率は、期間が長くなるほど高くなります。期間1年で1.0%、期間2年で1.2%、期間3年で1.4%など、預入期間に応じて適用される金利は異なります。
このような定期預金の金利の仕組みから、しばらくの間使うことのないお金は、高い利率が適用される長期の定期預金に預け入れたくなります。10年の定期預金にすれば、普通預金と比較すると、かなり高い利率が適用されるので、とても魅力的に思えます。
しかし、金利は常に変動しているのですから、定期預金に預け入れた翌日から金利が上昇し始めることだってあることを忘れてはいけません。
インフレになると期間が長いほど定期預金は不利になる
例えば、期間10年、年利2.0%の定期預金に預け入れた翌月に金利が上昇し、1年後に10年定期の利率が2.5%になっていたとします。このまま以前の10年定期に預けていたのでは、1年後の金利よりも0.5%低い利率で残り9年間、資金を運用することになります。
もしも、この定期預金が中途解約不能だった場合、1年後に年利2.5%の定期預金に預け替えできません。その後インフレとなり、2年後に3.0%、3年後に3.5%と徐々に金利が上がり、物価も上昇していくと、年利2.0%で資金を運用していたのでは、元本まで目減りしてしまうことになります。
必ず利息が得られるのなら、元本が目減りすることはないと思うでしょう。
しかし、インフレ率が当初契約した定期預金利率2.0%を上回る場合、名目的な元本は増えても、貨幣購買力が落ちているので、実質的には元本が目減りするのです。このように長期の定期預金はインフレに弱いので、契約する際は慎重であるべきです。また、将来の物価変動がどうなるかわからないのですから、まとまったお金を長期の定期預金に預けるのは控えた方が良いでしょう。
中途解約すると普通預金金利が適用される
多くの定期預金では、中途解約が可能です。だから、金利が上がった場合には、現在預けている定期預金を解約して、高い利率が適用される定期預金に預け替えをできます。
しかし、中途解約した場合に適用される利率は、多くの場合、解約日の普通預金金利となります。何年も定期預金に預けていたのに中途解約すると普通預金金利しかもらえないのなら、最初から普通預金にしておいたのと変わりません。
もちろん、この場合、普通預金金利も上昇しているでしょうから、ずっと普通預金に預けていた場合よりも定期預金に預けていた方が高い金利を得られます。しかし、普通預金金利が定期預金の預入日の定期預金金利よりも高くなっていた場合、当初の定期預金金利の3割や4割といった形でしか金利を受け取れません。
したがって、中途解約できると言っても、定期預金は途中で解約してしまうと金利が不利になってしまうのです。
このように長期の定期預金は、物価上昇局面では不利な資産運用の方法です。なので、定期預金に預け入れる場合は、短期間、中途解約可能といった条件を満たしたものに限定すべきです。
また、余剰資金の一部を定期預金に預けるべきです。残りは普通預金に残しておいて、金利が上昇した時に普通預金の一部を定期預金に預け替えするのが良いでしょう。