株で簡単に儲かるなら商売すればもっと儲かる

インターネットで株式投資について検索していると、簡単に株で儲かる方法を目にすることがあります。「株 儲かる」といったキーワードで検索すれば、そんな情報ばかりですね。

しかし、株式投資で損する人がいる以上、誰もが儲かるわけではありません。また、誰もが株式投資で簡単に儲かるのであれば、赤字を出す企業は少ないはずです。

株主は利益から配当を得る

株式投資での儲けには、株式を売却した時に得られる利益(キャピタルゲイン)と投資している企業から受け取る配当金(インカムゲイン)の2種類あります。

ここでは売却益はいったん置いといて、配当金について説明します。以下の損益計算書で、株主に配当される利益は、一番下に記載してある当期純利益です。

損益計算書

当期純利益がマイナスであれば、株主は配当を受けられません。だから、企業は株主に配当を支払うために当期純利益をプラスにするための努力をします。

企業は、株主よりも先に取引先に売上の一部を支払わなければなりません。

損益計算書の売上高の次に記載されている売上原価は、仕入先への支払いと考えられます。例えば、スーパーがアルミホイルを売った場合、その売上代金からまず仕入先にアルミホイルの仕入代金を支払います。仕入代金支払い後に残った売上高が売上総利益です。

売上総利益の下には販売費及び一般管理費(販間費)が記載されています。販間費は、従業員に支払う給料、広告宣伝費、固定資産の減価償却費など、販売活動や社内の管理のために要した費用のことです。つまり、売上総利益は、人件費の支払い、広告業者への支払い、機械や備品などの購入代金の支払いなどに使われます。

販間費の支払い後に残った利益が営業利益です。企業が銀行などの金融機関から借入をしていれば、営業利益の一部が借入金利息の支払いに充てられます。そして、残った利益が経常利益で、ここからさらに臨時的に発生した損益を加減算して求められた利益が税引前当期純利益、法人税等を支払った後の利益が当期純利益となります。

企業の売上高は、損益計算書に記載されている順番に取引先や従業員に支払われていくので、株主が利益から配当金を受け取れる順番は一番最後です。

株主の利益は不確実性が高い

このように損益計算書を見ていくと、株主が配当金として受け取れる当期純利益は、非常に不確実性が高いことがわかります。仕入先には必ず仕入代金を支払わなければなりません。従業員にも決まった給料を支給しなければなりません。株主と同じく資本の提供者である銀行は、株主に優先して利息を受け取れます。

そうやって売上高から取引先や従業員に支払った後の利益からも、国や自治体が一部を税金として持って行きます。

企業が利益を出すことは難しいのです。だから、7割の企業が赤字なのです。それなのに一番最後に利益の分配に与れる株主が容易に利益を得られるというのはおかしな話です。

株で簡単に儲かると言うのなら、商売をすればもっと簡単に儲かるはずです。

しかし、実際は商売で儲けるのはそう簡単なことではありません。商売で儲けるのが難しいのすから、商売がうまい企業を見つけ出して、その企業が上げた利益から配当を受け取るのはもっと難しいと思わなければなりません。