一時的な株価の変動と企業の収益力は連動しない

株価は、企業の財政状態や収益力を反映するはずです。100円の価値しかないものを1,000円で買う人はいないのと同じように、企業の純資産に将来獲得するであろう利益を加えた価額よりも高い金額を提示して当該企業の株式を取得しようとする人はいません。

株式を取得しようとするのは、投資家が支払う対価以上の見返りを将来受けられると考えるからです。では、その将来はいつ訪れるのでしょうか?

昨日の売上不振が今日の株価に反映されるか

企業は営利を目的とする組織なので、日々、利益獲得のための活動を行っています。営利活動を続け利益を獲得し続けている限りは、企業価値が増加していくので、それに伴って株価も上がっていくはずです。

だからと言っても、昨日の売上が今日の株価に反映されることは、そうそうないでしょう。なぜなら、昨日の売上が良かったのか悪かったのかを投資家が知ることは滅多にないからです。その企業の経営者であれば、毎日の売上と利益を把握できますが、その情報が瞬時に社会に公表されるとは限りません。むしろ、社会に公表されるのはかなりの時間が経ってからです。

したがって、昨日の売上がいつもよりも不振だったとしても、今日の株価に反映されることは、経営者が市場に売上不振を公表しない限りないはずです。

日々の株価は投資家の都合でも動いている

ある投資家が、株式を売却すれば、当該銘柄の時価は下落します。だからと言って、その企業の売上が悪かったとはなりません。なぜなら、株式を売却した株主が、たまたまお金が必要になったから売ったかもしれないからです。つまり、株主の個人的事情が株価に影響を与えただけなのです。

長い目で見れば、株価は企業価値を反映するように動くとしても、短期的には投資家の都合で株価が上がったり下がったりするので、短期間の株価の変動を注視しても、それほど意味のあることではありません。

もちろんデイトレーダーのように刻一刻と変化するチャートを見て買い時や売り時を判断しているのなら、短期間の株価の変動が気になるでしょう。しかし、どんなに株価チャートをじっと見つめていても、パソコンの向こうにいる見ず知らずの投資家の個人的な事情まで知ることはできません。

一時的な株価の動きを見て、いろいろと推理をしても大して得るものはありません。今日の株価の動きから、昨日の企業の売上や利益を知ることはできないのですから。