通常、株式取引は実際に株式を取得したり、持っている株式を売ったりする行為です。株式に限らず売買は、実物の受け渡しと金銭の授受が発生するのが基本です。
ところが、株式取引では株式の受け渡しがなくても売買を行えます。それが信用取引と呼ばれているものです。そして、自分が持っていない株式を売って利ザヤを稼ごうとする行為を空売りといいます。
株の空売りの仕組み
もう少し詳しく株式の空売りについて説明します。
例えば、知り合いの山田さんがA社の株式を1株持っていたとします。
今、あなたは100万円のお金が必要ですが、それだけのお金が手元にありませんでした。そこで、あなたは山田さんからA社の株式を1ヶ月間借りることにしました。そして、そのA社株式を100万円で売却し現金を手にします。
1ヶ月後。あなたは、山田さんにA社株式を返すために証券市場でA社株式を買い戻しました。その時の時価は90万円でした。あなたは、90万円で買い戻したA社株式を山田さんに返して約束を果たしました。
この一連の取引で、あなたはA社株式の売却で100万円を手にし、1ヶ月後にA社株式の取得で90万円を支出しているので、差引で10万円の利益を得ています。あなたは、自分ではA社株式を持っていないのに山田さんのA社株式を利用して株式取引をし、儲けることができたのです。
これが空売りと呼ばれる手法です。
空売りは単なる投機
株の空売りは、証券会社に信用取引口座を開設すれば行えます。しかし、そもそも空売りをしなければならない理由なんて個人投資家にはありません。
なぜ、他人から株式を借りて売却しなければならないのかを考えれば、空売りは単なるマネーゲームでしかないことがわかります。
通常、株式取引は取得が先で売却が後です。ところが、空売りは売却が先で取得が後となることから、通常の株式取引とは異なる手法で利ザヤを稼ぐことが可能です。将来、株価が下がると予測すれば株式を取得しようとは思いません。しかし、株価が下落局面にあっても、空売りを覚えれば株式取引に参加できます。しかも、元手いらずで他人の財産を利用して取引に参加できるといった利点があります。
信用取引を行うには証券会社に一定額の証拠金を差し入れる必要がありますが、証拠金の3倍まで取引可能です。100万円の証拠金であれば300万円の取引が可能なのです。だから、投機的に利ザヤを稼ぎたい人は信用取引に手を出すのです。
しかし、証拠金の3倍の空売りをすればうまくいけば3倍の利益を得られますが、失敗した時には3倍の損失を負うことがあります。個人投資家がこのような危険な取引に手を出すべきではありません。
そもそも株式投資は長期保有が基本です。短期的に利ザヤを稼ごうとする空売りは安全に資産形成をしようとするのなら覚える必要のない取引です。