企業の株価は、純資産の増減と関係があります。純資産が増加すれば株価は上昇しますし、純資産が減少すれば株価は低下します。
これは、とても当たり前のことなのですが、株価チャートばかりを追っかけている人の多くは、まったくと言っていいほど理解できていません。
将来の純資産増加が株価に織り込まれる
例えば、1,000万円の自己資本(純資産)で事業を始めたとします。その事業がうまくいき、1年間で1,000万円の利益を上げることができれば、純資産は2,000万円になります。
事業のスタート時点では、この会社の価値は純資産の1,000万円ですが、1年経過時点では企業価値は2倍の2,000万円に上がります。さらに2年目も業績が良く純資産が2倍の4,000万円に増加すれば、企業価値も4,000万円に上がります。
では、この会社の株式時価総額はどうなるでしょうか?
事業を開始した時点では、1,000万円の元手で1,000万円の資産を時価で取得していますから、株式時価総額も1,000万円です。そして、1年経過時点で純資産が2,000万円に増加していますから、この時点での株式時価総額は2,000万円となるはずです。
ところが、株式市場でのこの会社の評価はもっと高くなります。株式時価総額は2,000万円ではなく3,000万円や4,000万円に膨らむのです。
その理由は、株価にはその会社の将来性も織り込まれるからです。1年目に純資産を2倍に増加させていますから、2年目もきっと増収増益になるだろうと多くの投資家が予測すれば、純資産2,000万円以上の時価が株式市場で形成されます。
将来をどこまで予測できるか?
2年目に純資産が4,000万円まで増加すると、事業の開始から2年連続で純資産を2倍にしていますから、3年目も好調に違いないと予測する投資家が多くなるでしょう。そして、3年目も好調に違いないと予測する投資家の中には4年目も好調に違いないと考える人がいるはずです。4年目も好調と予測する投資家の中には、さらに5年目も好調に違いないと考える人がいます。
こうやって、その会社の何年も先の業績を予測した結果が株価に反映されるのです。
1年目が終了した時点で2倍の2,000万円に純資産が増えていれば、2年目も2倍に純資産が増えると予測する投資家は、その会社の株式時価総額が将来4,000万円になると考えます。1年目終了時点の株式時価総額が4,000万円未満なら、この投資家は当該会社の株式を取得します。3年目には8,000万円に純資産が増加していると予測した投資家は、1年目終了時点で株式時価総額が8,000万円未満であれば、当該会社の株式を取得するでしょう。
このように株価は、現在の純資産を起点にして、将来、どの程度純資産が増加するかを予測して決まります。
だから、株式投資では、財務諸表を見て将来の業績を予測することが大切なのです。