個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入して、将来の年金受給額を増やす場合、どのように掛金を運用するかを自分で決めなければなりません。そのため、掛金の運用成果に対して責任を負うのは自分であり、運用が上手くいかなかった場合でも、誰も損失を補てんしてくれません。
そのため、掛金をどのように運用するかは慎重に考えなければなりません。また、掛金の運用の仕方は個人のリスク許容度によって異なりますから、全ての人が満足する運用の仕方もありません。
資産配分は定期的に見直す
iDeCoでは、掛金をどのように運用するか、自分で配分指定しなければなりません。
例えば、掛金の配分を以下のようにしていたとしましょう。
- 国内株式型の投資信託=25%
- 国内債券型の投資信託=25%
- 海外株式型の投資信託=25%
- 海外債券型の投資信託=25%
この配分指定は、拠出した掛金に対するものです。例えば、毎月10,000円を掛金として拠出していた場合、4種類の投資信託に各2,500円を配分して運用していきます。
4種類とも、当初の思惑通りに万遍なく値上がりすれば、資産配分は各25%を維持できます。しかし、全てが同じ値動きをすることは稀ですから、長く運用していくうちに資産配分が変わってきます。
例えば、国内株式は2倍に値上がりしたけども、海外株式は半分に値下がりし、その他は現状維持だったとします。この場合、資産配分は以下のように変わります。
- 国内株式型の投資信託=45%
- 国内債券型の投資信託=22%
- 海外株式型の投資信託=11%
- 海外債券型の投資信託=22%
資産配分は、国内株式に偏り、海外株式の比率が著しく下がっています。
このように資産配分が当初予定していたものよりも大幅に変わってしまった場合には、見直すことが推奨されます。これをリバランスと言います。
上の例であれば、国内株式を25%になるまで売却し、その他の投資信託を買い増しして当初の資産配分に戻します。
- 国内株式型の投資信託=45% ←一部売却
- 国内債券型の投資信託=22% ←少し買い増し
- 海外株式型の投資信託=11% ←大幅に買い増し
- 海外債券型の投資信託=22% ←少し買い増し
リバランスは、過度なリスクをなくせるとされています。
掛金の配分指定を変えてリバランスできる
一部の資産を売却して値下がりしている資産を買い増しするのは、手っ取り早くリバランスできますが、投資信託を売却すると、信託財産留保額と呼ばれる手数料が発生します。
したがって、何度も一部の投資信託を売却してリバランスをしていると、手数料負担が大きくなり、その分だけ将来の年金受給額が減ってしまいます。
そのため、投資信託を売却するリバランスは、頻繁に行うべきではありません。
また、リバランスの方法は、売却だけではありません。
掛金の配分指定を変更することで時間をかけてリバランスしていくことも可能です。
当初の掛金の配分割合は以下の通りでした。
- 国内株式型の投資信託=25%
- 国内債券型の投資信託=25%
- 海外株式型の投資信託=25%
- 海外債券型の投資信託=25%
しかし、国内株式が値上がりし、海外株式が値下がりしたため、資産配分は以下のように変わっています。
- 国内株式型の投資信託=45%
- 国内債券型の投資信託=22%
- 海外株式型の投資信託=11%
- 海外債券型の投資信託=22%
この場合、各資産配分を25%に戻すには、例えば以下のように掛金の配分指定を変更します。
- 国内株式型の投資信託=10%
- 国内債券型の投資信託=25%
- 海外株式型の投資信託=40%
- 海外債券型の投資信託=25%
このように掛金の配分指定をすれば、少しずつ国内株式の資産割合が下がっていき、海外株式の資産割合が上がっていきます。
掛金の配分変更は、売却によるリバランスのように手数料が発生しません。ただ、元の資産配分に戻すのに時間がかかるという欠点があります。
バランス型の投資信託
iDeCoの資産配分を定期的に見直すのは面倒だという場合は、バランス型の投資信託で掛金を運用することもできます。
バランス型は、自動的に資産配分を調整してくれる投資信託です。最初から複数の投資信託を組み込んでいるので、自分で国内株式にどれだけ、海外株式にどれだけと掛金の配分指定を行う手間もありません。
ただし、バランス型は、投資信託の保有中ずっと発生する信託報酬が高めというデメリットがあります。また、金融機関に運用を任せっぱなしになる点もデメリットと言えます。
ターゲットイヤー型の投資信託
バランス型と似た投資信託にターゲットイヤー型があります。
ターゲットイヤー型は、年齢に合わせて自動的にリバランスする投資信託です。
若い時は、ある程度リスクを取れるので株式に多めに掛金を配分できますが、40代、50代と年齢が上がっていくにつれてリスクを取って掛金を運用しにくくなります。
そこで、ターゲットイヤー型では、若い時にリスクを取って大きなリターンを狙う投資信託に多めに掛金を配分し、年齢が上がるにつれて自動的に債券などのローリスクローリターンの投資信託にリバランスしていきます。
バランス型よりも、ターゲットイヤー型の方がライフスタイルも加味して掛金の配分を変更してくれるので、さらに資産配分を見直す手間を省けます。
ただし、ターゲットイヤー型は、バランス型よりも信託報酬が高くなります。
iDeCoの資産配分は、定期的に見直してリバランスすることが推奨されています。ただ、リバランスが必ず良い結果をもたらすわけではありません。
将来の相場を言い当てることは非常に難しいことです。リバランスは、リスクを抑えるためにするものであり、大きなリターンを求めて行うものではないことに留意しましょう。