配当金を支払わない企業の株式に投資すれば複利運用になる

投資の運用益を加速させる投資手法に複利運用があります。複利運用は、投資で儲けた利益もさらに投資に回して運用益を上乗せしていく方法です。

競馬で例えると1レースで的中した配当の全額を2レースの馬券購入に充て、さらに的中したら3レースに配当の全額を投資するといったものです。

複利運用は、運用益を生活費などの消費に使わないので、投資がうまくいけば多額の運用益を短期に得ることが可能です。

配当金を受け取ってさらに株式に投資する

今、あなたがある自動車メーカーの株式に投資していたとしましょう。あなたは、自分がいま思いつく投資先として、その自動車メーカーが最も安全かつ多くの運用益を上げれる投資対象だと考えています。

その自動車メーカーが決算を迎え、あなたの予想通り多くの利益を計上しました。利益は基本的に株主に配当金として支払われますが、利益を配当せずに社内留保する場合もあります。

ここで、あなたは複利運用で、より多くの運用益を得ようと考えていたとします。この場合、あなたは配当金を受け取った方が有利でしょうか、それとも、自動車メーカーが利益を社内留保した方が有利でしょうか?

もしも、配当金を受け取った場合は現金を手にできますが、1株当たりの配当金の分だけ株価が下がりますので、あなたは損も得もしません。あなたが、今後も自動車メーカーの好業績が続くと予想すれば、受け取った配当金で自動車メーカーの株式を買い増すでしょう。これは複利運用と言えますね。

一方、あなたが配当金を受け取らず、自動車メーカーが利益を社内留保した場合はどうでしょうか。自動車メーカーは、利益を社外流出させずに済んだので、その利益を元手にさらなる投資をできます。そして、その投資がうまくいけば、さらに利益が増え株価も上がります。この場合も、自動車メーカーが利益の全額を投資に回せば複利運用と同じです。

配当金を支払わない方が株主には有利

上記の例を見ると、株主は、配当金を受け取った場合も企業が利益を社内留保した場合も同じように複利運用が行われているように思えます。

しかし、あなたは、いま思いつく最も有利な投資先が自動車メーカーの株式だと判断して株式を取得したのですから、あなたが配当金を受け取ったとしても、その投資先は当該自動車メーカーの株式となるはずです。それ以外の会社の株式に投資しても、この自動車メーカー以上の運用益を上げれないのですから。

このように考えると、わざわざ利益を配当金として支払う企業の株式に投資するよりも、配当金の支払いを行わない企業の株式に投資した方が、複利運用の面では都合が良いと言えます。配当金を受け取ってさらに同じ会社の株式を買い増しても構いませんが、その場合、手間がかかりますし、自分が望む株価で買い増しできないかもしれません。また、配当金には税金がかかりますから、その分だけ取得できる株式数が減ります。

何より、その企業の経営判断で利益をさらなる設備投資に充ててくれた方が、自分が配当金を受け取って同じ企業の株式を取得するよりも、売上や利益の増加が期待できますし、さらなる株価の上昇にもつながります。

複利運用をするのなら、配当金を支払わない企業の株式に投資するのが手間もかかりませんし、経営のプロの判断で投資が行われるので確実性もあります。結局、最も有利な複利運用は、配当金を支払わない企業の株式を長期保有することなのです。