目先の少ない利益を重視し未来の多くの利益を捨てがち

A銀行の3年の定期預金は年利3%。B銀行の5年の定期預金は年利5%です。

あなたなら、どちらの定期預金にお金を預けますか?

現在の低金利からすると、年利3%も5%も魅力的です。これからも低金利の時代は長く続きそうですから、B銀行の5年定期の方が5%の利息が付くので魅力的に感じる人が多いと思います。

時間の経過に伴い選好が逆転する

今から、定期預金にお金を預けるなら、B銀行の5年定期を選ぶ人が多そうだということは、なんとなく想像できるでしょう。

3年後から金利が急上昇を始めると予測する人なら別ですが。

実際にB銀行の5年定期にお金を預け2年11ヶ月が経過しました。

すると、B銀行から「定期預金に関するお知らせ」というDMが自宅に届きました。その内容は、預入日から満3年が経過した時点で定期預金を引き出せるというものです。ただし、利息は預入日から年利3%で計算した金額が支払われるとなっています。

この場合、3年経過時点で3%の利息を受け取るか、それとも、もう2年待って5%の利息を受け取るか、どちらを選びますか?

このような質問をされると、当初は年利5%の5年定期を選んだ人でも、年利3%の3年定期にする場合があります。

人は、常に同じ選択をするのではなく、時間の経過によって選好が変わることがあります。この現象を時間的非整合性といいます。

最初に年利5%の5年定期が得だと思ったのなら、その他の条件が変わらない限り、時間が経過しても年利5%の5年定期を選ぶのが合理的な判断と言えます。ところが、遠い先のことと思っていた3年後の未来が、すぐそこまでやって来ると、年利3%の3年定期の方が魅力的に感じられるのです。

時間の経過に従い選好が逆転する

これは、双曲型割引と同じで、目先の利益を重視する傾向が人にはあることを意味しています。

現在志向バイアスが働く

時間的非整合が生じる理由として、現在志向バイアスが挙げられます。

例えば、背の低い建物の後ろに背の高い建物が建っていたとします。

遠く離れた場所から、2つの建物が前後に並ぶように眺めると、手前の建物も後ろの建物も見えます。

遠くからだと手前と後ろの建物が見える

自分の立っている位置と建物が建っている位置との距離を時間、建物の高さを効用とした場合、遠くからだと、手前の建物より後ろの建物の方が背が高いので、後ろの建物の効用が大きいことがわかります。

でも、手前の背の低い建物に近づくと、後ろの背の高い建物が見えなくなります。

近くからだと後ろの建物が見えない

しかも、背の低い建物でも間近で見上げると、とても高い建物に見えます。

時間的非整合が生じるのも、これと同じです。

利益が少ないと思っていた年利3%の3年定期も、3年に近づくにつれて利益が大きなものに感じるようになります。そして、目の前の利益が邪魔して、後ろのもっと大きな利益が見えなくなってきます。

長期投資の視点を持ち続けるためにはどうすべきか

資産運用では、短期投資よりも長期投資に力を入れるべきです。株価は、短期的に上下に変動しますが、長期的視点で見ると、上昇傾向にある銘柄が多いことはよく知られています。

しかし、多くの投資家がそのことを知っていますが、なかなか長期的視点で資産運用できません。これは、現在志向バイアスが働いていることが考えられます。

デイトレーダーが、1日に多くの利益を稼ぎ出したと聞くと、自分もデイトレードをした方が良いのではないかと思ってしまいます。もしも、1日で数万円の利益を稼ぐことができれば、すぐに買いたかった洋服や電化製品を手に入れることができます。それは、誰にとっても魅力的なことです。

でも、デイトレードで利益を出すことは、ほとんど運ですから、大事な資産をつぎ込むべきではありません。

長期的視点で資産運用をするためには、余裕資金を投資することが大切です。余裕資金は、今、そのお金がなくても生活に困らない程度の金額です。持っている多くのお金を長期投資するのは難しいですが、少額のお金であれば長期投資がしやすくなります。

さすがに数万円の資金では、どうしようもありませんが、数十万円のお金が余裕資金と感じられるようになれば長期投資に回せます。

誰にでも、今を重視する現在志向バイアスが働きます。

それを知っているだけでも、今より長期的な視点で資産運用できるはずです。