株価がずっと下がり続けている銘柄があったとします。
この銘柄は、株価がいずれ上がり出すでしょうか。それとも下がり続けるでしょうか。
株価が一定期間下がり続けている銘柄は、どこかのタイミングで反発する傾向にあると気づいた人は、きっとこの銘柄もどこかのタイミングで上昇に転じると考えるかもしれません。
果たして、その考えは正しいでしょうか。
サンプル数が十分か
一定期間値下がりした銘柄が、どこかのタイミングで値上がりすることに気づいたとした場合、調査したサンプル数がいくつかを記録しておかなければなりません。
例えば、値下がりから値上がりに転じた銘柄の割合が70%だったとします。
10銘柄のうち7銘柄が当てはまっている場合と1,000銘柄のうち700銘柄が当てはまっている場合では、どちらが信頼できるでしょうか。
きっと、多くの人が後者の方が信頼できると答えるはずです。
値下がりしている銘柄が値上がりする確率は70%だと言っても、サンプル数が少なければ信頼できるデータではありません。サンプル数が少なすぎると結果にばらつきが生じやすいので、抽出したサンプルが母集団の特性を表さなくなります。
個人が調査できる範囲は限定されますから、サンプルを抽出して傾向を探ったとしても、母集団の特性を知ることは難しいでしょう。しかし、人は、少ないサンプル数から得られたデータでも、母集団全体の特性を表していると判断し、間違った意思決定をしてしまいがちです。
これを少数の法則といいます。
もしも、株価が下がり続けている銘柄は、いずれ上がると言う人がいたら、観測範囲がどの程度なのかを質問した方が良いでしょう。
同じことが連続するとそろそろ終わると考えてしまう
毎日株価が下がり続けている銘柄を見つけると、そろそろ上がり始めるのではないかと思うことは、よくあります。同じことが連続するのは偶然だと思いたくなりますし、実際、偶然に何度も同じことが起こったのを見た経験は誰にでもあるはずです。
プロ野球で、あるチームが10連敗したら、翌日はそろそろ勝つだろうと期待するのではないでしょうか。雨の日が5日続いたら、明日は晴れると期待するのではないでしょうか。
でも、11連敗することもありますし、6日連続で雨が降ることもあります。
同じことが連続すると、そろそろ終わるのではないかと考えたくなりますが、そう思うことに根拠はほとんどないでしょう。
コインを10回投げて、表が10回連続出た場合、なんとなく次は裏が出る確率が高いのではないかと考える人がいるかもしれません。
でも、コインに何の細工もなければ、表が出る確率も裏が出る確率も同じ50%ですから、11回目にコインを投げて表と出る確率と裏と出る確率も同じ50%です。
例え連続10回表が出たからと言って、11回目に裏が出る確率が上がることはありません。
しかし、同じことが連続すると、次は同じことが起こらないと考えたくなるものです。これをギャンブラーの誤謬と言います。
競馬で、3レース続けて1番人気が勝ったから、次のレースでは1番人気が負けるはずだと考えるべきではありません。過去3レースの結果と次のレースとの間に因果関係はありません。
チャートばかり見ているとギャンブラーの誤謬に陥る
デイトレーダーのように短期売買を繰り返している人は、株価チャートの動きから売り時や買い時を判断することが多いです。
株価が企業の業績を反映するものだと考えるなら、過去の株価の変動は、将来の企業業績とは関係がないはずです。今まで収益が伸び悩んでいた企業でも、新製品のヒットで業績が上向くことはあります。
そのヒットを受けて株価が上がったのを「下がり続けている銘柄は上がる」との格言に当てはめるのは違うでしょう。
このような投資判断は、ギャンブラーの誤謬に陥っていると言えます。
もしも、株式取引をしている大多数の投資家がデイトレーダーであれば、「下がり続けている銘柄は上がる」との格言を信じて、一斉に買い注文を出し、株価が上がるかもしれません。
でも、デイトレーダーがどれだけいるのかわかりませんから、株価が下がり続けているからと言っても、値上がりするかは不明です。
そのような格言を信じて取引するよりも、事業内容を把握し、財務諸表を見て、そうそう倒産することはないと思える企業の株式に投資した方が安全です。