外国為替証拠金取引、俗にFXと呼ばれている金融取引はデリバティブです。デリバティブは金融派生商品とも呼ばれており、先物、オプション、スワップなど様々な取引形態があります。
デリバティブは、「派生」という言葉が入っているように原資産とは異なるところで、原資産の将来の売買が約束される取引です。そして、デリバティブは、本来、原資産を有している場合に行う取引であり、原資産を有していない場合には手を出すべき取引ではないのです。
外貨建資産は為替リスクを負っている
例えば、現在、米国企業の社債を保有しているとします。償還日はちょうど1年後としましょう。
社債を引き受けた時の為替相場が1ドル=100円で、取得したのが100ドルだったとしたら、1万円で米国企業の社債を買ったことになります。もしも、1年後の償還日に1ドル=90円になっていれば合計1,000円の為替差損が発生します。反対に1ドル=110円になっていれば合計1,000円の為替差益が発生します。
1年後に今よりも円安になっていると予測しているなら、このまま米国企業の社債を保有し続けても構いません。しかし、1年後に今よりも円高になっていると予測した場合には、将来の損失を回避するための対策を打たなければなりません。
同額の借金をして為替リスクをヘッジする
外貨建資産の為替リスクを回避(ヘッジ)する最も簡単な方法は、同額の外貨建負債を持つこと、上の例では米ドル建てで借金をすることです。
米国企業の社債を100ドルで引き受けていますから、ドル建てで100ドルの借金をしてすぐに円に替えます。仮に為替相場が1ドル=100円の時に1万円に交換したとします。
1年後に1ドル=90円になっていれば、米国企業の社債が償還された時に9,000円の現金が入ってきます。したがって、為替差損が1,000円発生します。しかし、同じ日に100ドルの借金を返済した時の為替相場が1ドル=90円ですから、100ドルを得るために交換した円は9,000円となり、借金した時の1万円との比較で為替差益が1,000円発生します。
米国企業の社債から発生した為替差損1,000円とドル建ての借金から発生した為替差益1,000円が相殺されるので、2つの取引を1つとみなせば、為替差損益はゼロ、つまり為替変動はなかったことになります。
FXはヘッジのためにするもの
上記の一連の取引を見ると、為替リスクをヘッジするためにドル建ての借金をするのは面倒です。金利も発生しますから借金せずに為替リスクをヘッジしたいと思うでしょう。
この借金せずに為替リスクをヘッジしたいという投資家の要望に応えたのが、為替予約、通貨オプション、FXなどのデリバティブなのです。
外貨建資産を保有している場合、それを円貨に交換する時点で今よりも円高になっていれば損します。その損をなくすためにわざわざドル建ての借金をしなくても済むように為替予約やFXを利用するのです。
上の例であれば、米国企業の社債の償還日に円高になっていれば得する取引をします。為替予約であれば、1ドル=100円で売る契約を事前に金融機関と結んでおけば為替リスのヘッジができます。そして、FXも本来は、このように利用するものなのです。
外貨建資産を持っていないのにFXに手を出すのは単なる投機です。それを知らずにFXを始めた初心者が損しても仕方のないことです。