外国為替証拠金取引(FX)は、証拠金を差し入れて外貨の売買を行います。
外貨預金であれば、1万円を銀行に持っていけば、その時の為替レートで1万円分の外貨預金ができます。ドルでもユーロでも、好きな外貨を選んで1万円を当該外貨と交換するので、その時点では1万円の価値の交換でしかありません。
ところが、FXは1万円を金融機関に証拠金として差し入れ、その数十倍の金額の外貨建取引をできます。
証拠金の25倍の取引
FXの場合、差し入れた証拠金の25倍の外貨建取引が可能です。1万円を差し入れれば、25万円分の取引ができるのです。
例えば、1万円を差し入れて米ドルを買う取引をしたとします。為替相場は1ドル=100円としましょう。
通常の外貨預金であれば、1万円を100ドルに交換することになります。1ヶ月後に円安(ドル高)になり、1ドル=110円になっていれば、100ドルを円に交換すると11,000円になり1,000円の為替差益が出ます。
もしも、1万円の証拠金を差し入れてFXをしていたら、25万円で2,500ドルを買う取引ができたので、1ヶ月後には275,000円になり25,000円の為替差益が出ます。わずか1万円で25倍の取引ができるので、証拠金をテコのように利用して大きな取引をしたことになります。このテコの原理のことをレバレッジ効果と言います。
損した時もレバレッジがかかる
上の例では、うまくいきましたが、反対に10%円高に進めば、25,000円の為替差損が発生します。差し入れた証拠金は10,000円なので、15,000円の不足です。この不足した15,000円を金融機関に追加で差し入れなければなりません。これを追加証拠金、通称、追証(おいしょう)といいます。
FXに限らず、デリバティブ取引で怖いのは、この追証です。
15,000円の追証なら誰でも簡単に支払えます。しかし、最初に10万円の証拠金を差し入れて25万円の損失が出た場合はどうでしょうか?この場合、15万円の追加証拠金を差し入れなければなりません。
もしも、FXを外貨預金の感覚で利用し、100万円を証拠金として差し入れて取引をしていたら、150万円の追証が必要になります。元本の100万円も損し、さらに借金まで背負ってしまう危険があるのです。
今、FXに手を出している多くの個人投資家が、このことを理解していません。きっと、FXをやっている人たちは理解していると思っているのでしょうが、本当に理解しているのであれば、FXではなく外貨預金にしているはずです。
株式投資であれば、損しても、その株式の取得原価が上限です。しかし、FXは証拠金だけを差し入れればレバレッジを効かせて大きな取引ができるので、損失は無限大と言っても過言ではありません。
投資は余裕資金の範囲内でするべきだと誰もが言います。
では、FXでの余裕資金はいくらなのでしょうか?それは、差し入れた証拠金の25倍です。1万円を差し入れたのであれば25万円です。その25万円がなくなっても笑っていられるのであれば、FXをしても良いでしょう。
しかし、多くの個人投資家が笑っていられない金額の取引をやっているのです。