他社株転換社債(EB債)は投資する価値なし

他社株転換社債をご存知でしょうか?

Exchangeable Bond(EB債)とも呼ばれているもので、ある企業の社債に投資し、満期日にその社債の額面よりも他の企業の株価が高ければ社債の額面金額が償還され、株価が低ければ株式の現物が受取れるというものです。

はっきり言って、他社株転換社債は投資する価値はまったくありません。

投資家が絶対に損する仕組み

他社株転換社債は2000年前後に流行った投資商品で、現在ではあまり見かけなくなりました。仕組みを知ってしまえば、誰も手を出さなくなるので、そのうち完全に消滅するときが来るでしょう。

具体例で説明ます。

今、額面10,000円のA社社債があったとします。そして、ある金融機関が、A社社債を単独で売らず、B社株式の株価と連動させた金融商品として販売していたとします。

仕組みは、A社社債の満期日までにB社株式が10,000円よりも値上がりしていればA社社債の額面金額10,000円を投資家に償還、B社株式が10,000円よりも値下がりしていればB社社債の現物を引き渡すといったものです。

もしも、A社社債だけを買った場合、B社株式の株価と関係なく満期日には10,000円が返ってきます。

対して、他社株転換社債としてA社社債を買った場合には以下のようになります。

  • B社株式の株価が10,000円以上の場合=現金10,000円が返ってくる
  • B社株式の株価が10,000円未満の場合=10,000円未満の価値しかないB社株式をもらえる

これを見ればわかるように他社株転換社債は、B社株式がどんなに値上がりしても現金10,000円しか返ってきません。そして、B社株式が値下がりした時には、10,000円未満の価値しかないB社株式を受け取らなくてはならないのです。もしも、B社株式が5,000円まで値下がりしたら大損です。

それなら、最初からA社社債を買っておけば、B社株式の株価とは関係なく満期日に10,000円が返ってきますから、A社が倒産しない限り損することはありません。つまり、他社株転換社債は投資家が一方的に損する仕組みになっているのです。

金融機関は絶対損しない

投資家とは逆に他社株転換社債を売った金融機関は、必ず得するようになっています。

B社株式が15,000円まで値上がりした場合には、投資家に10,000円だけ支払えばいいのですから、金融機関は5,000円の利益が出ます。B社株式が8,000円になった場合には、B社株式を投資家に渡せばいいので、2,000円の損失は投資家が被り、金融機関は損しません。

他社株転換社債は、そもそも金融機関がA社社債を買わなくても取引が成立します。

例えば、金融機関がすでにB社株式を持っていて、これを10,000円以上で売却したいと考えていれば、投資家から受け取った10,000円をそのまま金庫に保管しておくこともできます。A社社債の満期日にB社株式の株価が10,000円未満になれば、B社株式を投資家に渡し、金融機関は10,000円を自分の懐に入れれます。B社株式の株価が10,000円以上になれば、現金10,000円を投資家に返して、金融機関はB社株式を売却し、見事当初のもくろみ通り、10,000円以上でB社株式を処分できるのです。

すなわち、金融機関は投資家から預かった10,000円を担保にB社株式に投資しているのと同じなのです。さすがに金融機関も、投資家からお金を預かって社債を購入しないということはないと思いますが。

いずれにしても、他社株転換社債は投資家が得することはない金融商品だと知っておきましょう。