インフレになれば企業環境が不安定になって株価に悪影響を与える危険がある

インフレになれば預貯金の価値が目減りしてしまうから、株式や投資信託に投資しておかないと危険だと言われています。しかし、普通預金の利率にはインフレ率も加味されるので、物価が上昇しても価値が目減りすることは基本的にありません。

ハイパーインフレになれば、銀行が利率を引き上げても、後手後手に回るので物価上昇による資産の目減りを防げない可能性はあります。しかし、その場合でも、株式や投資信託が安全だとは限りません。

企業活動が物価の影響を受けやすくなる

インフレになれば、必ず株価が上がるわけではありません。下がる場合だってあります。むしろ、ハイパーインフレになれば、企業環境が不安定になるのですから、業績の変動が激しくなり、下手をすれば倒産するかもしれません。

例えば、メーカーであれば、インフレになると原材料の仕入価格が常に上昇しているのですから、製品を販売してから売掛金の回収までに数ヶ月もかかっていては、次の生産に必要な原材料の仕入価格が高騰して、回収した売掛金では仕入ができない危険があります。

1万円で原材料を仕入れ製品を5万円で販売しても、売掛金の回収が4ヶ月後であれば、その間に物価が上昇して原材料が6万円に値上がりしていたら、次の生産に必要な原材料を仕入れられません。通常、企業の取引は、代金の受払が数ヶ月後になるので、その間の物価変動リスクを避けられないのです。

損失を出せば株価は下落する

当たり前ですが、企業が損失を出せば純資産が目減りするので、それに従って株価も下落します。特にハイパーインフレ時には、売掛金の回収に数ヶ月を要するので、その間の物価変動で利益が失われる危険性が高くなりますから、赤字に転落する企業も増えます。

このことを理解していれば、インフレに備えて株式や投資信託に投資すべきとは言えないでしょう。特に投資信託は、債券を中心に運用されていれば利率がインフレ率を下回ると確実に損をします。

インフレが企業に良い影響を与えるのは、物価の上昇が緩やかな場合です。預貯金の利率に大きな影響を与えるようなインフレが訪れれば、企業業績も不安定になり株価に悪影響が出ることは容易に想像できるはずです。

インフレに備えて株式投資すべきだと主張する人には注意しましょう。